グリーンウェイランチ vol.1

執筆者 グリーンウェイランチ オーナー 藤本みどり 

乗馬歴38年。ブリティッシュスタイルで乗馬を経験し、後にウェスタンライディングに転向してウエスタン馬術のレイニングを始めました。1999年に渡米。本格的なレイニングホースの調教を学びながら競技会出場の経験を重ね、2006年にノースカロライナ州 スミスフィールドにて乗馬施設、グリーンウェイランチを立ち上げました。良い馬作り、良い乗り手の育成を目標に、現在は乗馬指導と当牧場で生産した馬の調教に励んでいます。 グリーンウェイランチでは初心者をはじめ、トレーナーを目指している方や競技会に出場希望する上級者などのレッスンを含め様々なご要望にお応えしています。

会社勤めをしていた当時24歳だった私は初めて乗馬を経験しました。

長い砂浜が続く海岸線を散歩していたら、気持ち良さそうに馬に乗って走っている人を見かけたのがきっかけです。それはまったく予期せぬ光景でとても感動的でした。

(すごい! あんな風に馬と一緒に走ってみたい・・・!)

見渡す限りの水平線を背に、海辺を疾走する馬と人。その姿を遠く視界から消えるまで見送った後、暫く歩くと柵で囲われた数頭の馬が見え、そこには乗馬クラブの看板が立っていました。その時が夢にまで見た乗馬を経験するチャンスでした。 

引き込まれるように入ったクラブで間近に見た馬は、馬装のために洗い場に繋がれていて、その背は私の背丈ほどもあり馬の大きさに圧倒されたのが第一印象でした。初めて触れる毛並みはビロードのようで、逞しい筋肉の大きな身体を支える肢の細さに驚きました。私を見つめる長いまつ毛の優しく澄んだ目に一目で魅了されてしまいました。

初めて体感する馬上からの景色は格別で、気分が高揚していたせいか不思議と怖さはありませんでしたが、馬場まで引馬された時は揺れが意外に大きく感じ、足をかけている鐙だけでは、バランスがうまく取れない様な気がして心細かったのを覚えています。

結局、この日たった一回の体験で私は乗馬、そしてそれ以上に馬そのものに夢中になり会社が休みのたびに乗馬クラブに通いつめるという生活を送るようになりました。 

それが今の自分の仕事に繋がるキッカケになるとは夢にも思わず・・・、人生とは不思議なものです。

仕事柄、私は多くの人が馬に惹かれるのを見てきています。馬の何が人をそんなにひきつけるのか・・・、その理由はほとんど同じなのです。

人は自分よりはるかに大きく力のある馬とコミュニケーションをとりながら、自分一人では不可能な事を一緒に行うことができるからだと思います。 

6000年もの昔、馬は人にとって食料だったと言います。時を経て人は馬を飼育する術を編み出し、労働や移動の手段として生活に活用するようになりました。馬を操作する上で馬とのコミュニケーションを可能とする道具、ハミは3000年も前に作り出されたものだそうです。 

時代と共に人と馬の関係は変化して機械が馬の役目を果たす現代、馬は使役から解放され彼らの活躍の場は乗馬や競馬の限られた世界になりましたが、今でも馬に惹かれて密接な関わりを持っている人たちがいるのは興味深いです。 

馬が本来持つ従順な性質と鋭い感覚が、人とのコミュニケーションを可能にしてきました。 馬を乗りこなすには彼らとの意思疎通は必要不可欠で、人はそのために馬の口に作用するハミを使いながら声や身体を駆使し、そして何よりお互いの感性を生かしながら相互のコミュニケーションを確立する方法を作り上げていく事になります。

出典:馬旅創刊号

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