第9回 馬上でできるヨガ①
これまで数回に渡り様々なアーサナ(ヨガのポーズ)を通して乗馬をするのに必要なバランス感覚や筋力の養い方をご紹介してきました。普段から自分の内面に意識を向け体と心をケアをする習慣をもつことで、乗馬時にも自分の体をコントロールしやすくなり馬とのコミュニケーションを円滑にしてくれることでしょう。でも、やっぱり馬に乗ると少し緊張してしまったり体が硬くなってしまう、という方も少なくないと思います。そこで、今回は馬の上でも簡単にできるヨガの応用編となります。馬の上で体を動かすことで、心身ともにリラックスできたり、正しいバランスに導いてくれるでしょう。
今回紹介するのは『猫のポーズ』というアーサナで、猫が伸びをする姿に似ていることからそう呼ばれています。通常のヨガでは、四つん這いの体勢で体を丸めるのと反らすのを繰り返すことで、背骨のストレッチを行います。それでは、どのようにこのアーサナを馬の上で応用できるか見ていきましょう。まず、鞍つぼ(鞍の中央の一番窪んだ部分)に座り骨盤を立て坐骨が鞍に対して垂直であることを確かめます。そして、背骨をまっすぐ伸ばし肩の力は抜きましょう。この姿勢がスタートのポジションになり、そこから息を吐きながら背中を丸めていきます。同時に頭を前に倒し、骨盤は後ろに傾かせ、お腹はへこませるようにし、頭から首、背骨、尾てい骨までしっかり丸まり、体の後ろ側がストレッチできているか感じるようにしましょう。
息を吐き切ったら、今度は息を吸いながら背中を反らせていきます。先ほどとは反対に、頭を持ち上げ後ろに倒し、骨盤は前に傾かせるようにし、お腹は前に押し出します。胸と肩を開き、体の前側が伸びるようにしましょう。この息を吐きながら背中を丸め、息を吸いながら背中を反らすという動作をゆっくり繰り返していきます。
この動きに慣れたら、坐骨の鞍に対しての角度に意識を向けてみるといいでしょう。垂直の状態から、背中を丸める時には骨盤は後ろに傾くため、坐骨は前を向くようになり、逆に背中を反らす時には骨盤は前に傾くため、坐骨はやや後ろを向くようになります。坐骨は鞍を通して馬の背中と接している部分で、馬に指示を出す上で重要な『騎座』あるいは『シート』といわれる扶助と深く関わっています。拳や脚より騎座、シートの使い方は感覚を掴むのが難しいと思いますので、まずはぜひこの坐骨の動きを感じるところから始めてみてください。また、坐骨や背骨をあえて動かすことで真っ直ぐな姿勢や正しいバランスを見つけやすくなるでしょう。
自分の体の感覚に集中できるよう、まずは止まっている馬の上で行い、その後常歩でも行うといいでしょう。坐骨の動きを感じられるようになると、さらに馬の背中の動きもお尻で感じ取りやすくなると思います。
ヨガも乗馬も決して辛い姿勢を無理して保つものではありません。前傾や猫背になってしまったり、肩に力が入ってしまう方、またはそれを直そうと思っても力んでしまい姿勢を保つのが大変だなと感じる方は、体を動かすことでその部分がリラックスできたり、より楽にバランスを保つことができるようになるでしょう。2分でできるので、ぜひお試しください!
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執筆者:市村美歩
2016年、イギリスWrittle University College, Equine Sports Therapy and Rehabilitation(馬のスポーツセラピーとリハビリテーション専攻)の学位取得。2019年インドにて全米ヨガアライアンス認定ヨガ指導者資格取得。
現在は『Miho Ichimura Equine Sports Therapy』で馬のマッサージを中心とした整体、スポーツセラピーのサービスを提供。海外の馬情報もSNSで配信中。