第4回 乗馬のためのアーサナ《ウォームアップ編》

乗馬ヨガ

これまで『バランス』、『呼吸』、『マインドフルネス』などをテーマに様々なヨガと乗馬の共通点をご紹介してきましたが、これから数回に渡り、実際に乗馬に効果のあるヨガのポーズをご紹介していきたいと思います。ヨガではこのポーズのことをアーサナと呼びます。一般的にはヨガというとアーサナのことを指すことが多いですが、これまでお話した通りヨガはアーサナが全てではありません。しかし、自分の体を実際に動かすことで、体を感じ、理解し、コントロールができる唯一の方法としてアーサナの練習、実践が非常に大切なものとされていることも事実です。

今回は具体的なアーサナの紹介の前に、通常のヨガのクラスでも必ず最初に行うウォームアップ(ストレッチ)についてご説明していきます。ウォームアップでは体の関節をしっかりほぐし、筋肉を緩め、その後の運動に備えます。急に強度の高い運動をして体を痛めたり怪我をしてしまうのを防ぎ、また、体のコントロールや筋肉の強化という点でも、体を滞りのない状態にすることで効率の良いトレーニングができるでしょう。全く同じ理由で乗馬の前にきちんとウォームアップをしておくことで馬上でもより体がコントロールしやすくなったり、万が一落馬をしてもダメージが少なくなるかもしれません!特に股関節などは馬にまたがると通常の立っている状態とも座っている状態とも違う体勢になるため、よくほぐしておくといいでしょう。

ストレッチは様々な形で取り入れることができます。騎乗前、もしくは馬に乗ってから運動前に自分なりの馬上体操としてやってみるのもいいでしょう。また、乗馬の時だけでなく日常的に行えば、もちろんより多くの効果が期待できます。基本的には立った状態でも座った状態でも出来るので、形にこだわらず少しでも時間があれば始めてみましょう!具体的には足の指、足首、膝、股関節、手の指、手首、肘、肩、首の各関節を回す、または曲げる動きでほぐしていきます。順番は決まっていませんが、体の上から下へ、もしくは下から上へ順に行っていくとスムーズです。その後、胴体を捻る動き、体側を伸ばす動き、そして後屈、前屈で背骨も伸ばしていきましょう。

しかし、ただ準備運動をするだけではヨガとは言えません。では、ここで第1回のコラムでお話した乗馬とヨガに共通する必要な要素を思い出してみましょう。『重心のバランス』、『筋力』、『柔軟性』、『集中力』と『リラックス』でしたね。ウォームアップでストレッチをすると、主に柔軟性が高められ、バランス感覚と筋力については直接的に作用しませんが、その後のバランス感覚と筋力を高める運動の準備になります。そして、ヨガではそこに第2回と第3回でお話した「呼吸のコントロール」と「マインドフルネス」を用いることで、集中力とリラックスといった精神面にもアプローチしていきます。

例えば、首を回す動作では首を上げる時に息を吸い、下げる時に息を吐き、一周で一呼吸というように呼吸と動きを同調させます。そして、ゆっくり回しながら、同時に体がその時に感じていることに意識を向けることで筋肉が伸びている箇所を感じたり、逆に凝っているところや力んでしまう癖を発見できたりします。こうすることで体がリラックスすると共に頭もリラックスしていき、その上でクリアで集中している状態へと導いてくれるでしょう。

「やらないよりはまし!」と思って、5分からでもぜひ始めてみてください!しばらく続けていると、少しずつ体の変化を感じることができるかもしれません。

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執筆者:市村美歩
2016年、イギリスWrittle University College, Equine Sports Therapy and Rehabilitation(馬のスポーツセラピーとリハビリテーション専攻)の学位取得。2019年インドにて全米ヨガアライアンス認定ヨガ指導者資格取得。 
現在は『Miho Ichimura Equine Sports Therapy』で馬のマッサージを中心とした整体、スポーツセラピーのサービスを提供。海外の馬情報もSNSで配信中。

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